三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

誤審のスポーツ史

「人間は誰もが完璧ではない」
中村 計

2015年1月号

 二〇一四年は将来、「審判不要論」側に舵を切った年として記憶されることになるかもしれない。

 というのも昨年、米メジャーリーグ(以下、MLB)で、ストライク・ボールの判定等を除くほとんどのプレーにおいてビデオ判定が適用されることになったからだ(ホームランか否かのジャッジに関しては〇八年八月から導入)。

 アメリカンフットボールやバスケットボールでは当たり前のように行われていたビデオ判定をMLBだけは長らく拒み続けていた。

 野球ほど判定の機会が頻繁なメジャースポーツは他にない。それでいながら時間制ではなく回数制のため、試合時間が長引きやすい。サッカーやラグビー等、時間制を採用しているスポーツは概ね二時間以内に収まるが、野球の場合は三、四時間は当たり前だ。そのためMLBにおいて審判は、正確であること以上に、いかに試合を円滑に進めるかが求められた。一方的な試合になれば、少々ボールでもストライクをコールする。そうした微妙な匙加減は、白か黒かの二元論で動く機械がもっとも苦手とする分野だ。

 スポーツ史は、言・・・