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政治

《政界スキャン》360

安倍「積極的平和主義」に落とし穴

2015年2月号

 好事魔多し、とはよく言ったものだ。首相安倍晋三が昨年暮れの衆院選勝利の余勢を駆って出かけた一月の中東訪問には、大きな落とし穴が待ち受けていた。

「イスラム国」による邦人人質事件である。イスラエルとパレスチナの橋渡しをすることで「積極的平和主義」を高らかに謳い上げんとした見せ場が、安倍官邸の急所たる危機管理の修羅場に一転した。

 何でこの時期にノコノコ中東まで出かけたのか。自民党内にはそんな声まで出ている。

 もちろん、憎むべきはテロリズムであり、善意の仲介者たらんとした心意気にはそれなりの敬意を表すべきであろう。地球を俯瞰する外交であちこち歩くのもいい。

 だが、戦後七十年という節目の年の皮切り外交としてはいかがなものか。何よりもパリのテロ事件が暗雲として垂れこめ、次に何が起きるか予断を許さない状況下にあった。加えて謎の狂信集団「イスラム国」台頭を軸とする中東の混乱の調停者になれるほど、日本外交の実力があるとも思えない。

 にもかかわらず、「イスラム国」を包囲する有志連合の一・・・