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夜明けは遠いインドネシア

国民裏切る「庶民派大統領」の無力

2015年3月号

 昨年十月の就任から四カ月が経過したインドネシアのジョコ・ウィドド大統領が、早くも国民の批判を浴びている。ハネムーン期間と呼ばれる百日間が過ぎる前から、杜撰な政権運営を続けている庶民派大統領が早くも壁に直面した。順調だった経済成長にも陰りが見える中で、インドネシアの迷走が始まっている。 「独り立ち」できない大統領  貧しい大工の家に生まれ、自らも家具製造業者だったという大統領は、ジャカルタ特別州知事時代から愛称の「ジョコウィ」のほうが通りがいい。インドネシアの過去の大統領と比較すれば「平民大統領」とでも呼ぶべき経歴であり、国民が期待したのは庶民の目線に立った政策実現だった。しかし、ジョコウィ氏は実権を持たぬ神輿に過ぎない。  二月六日、ジョコウィ大統領は外遊でマレーシアのセランゴール州を訪れた。当日この場所では、マレーシアの自動車メーカー「プロトン」と、インドネシアのACLという会社が乗用車の共同開発・生産に向けた合意書に調印した。この式典にジョコウィ大統領も出席したが、プロトン側で調印したのは同社の会長、マハティール元首相だ。一方のACLは同社CEO(・・・