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連載

日本の科学アラカルト 55

業を背負った原子力研究 「廃炉」と「次世代炉」のいま

2015年3月号

 東日本大震災から四年目を迎える。福島第一原発事故発生からも同じ時間が経過しているが、原発周辺は他の被災地と比較すれば格段に復興の歩みは遅く、時間が止まっているかのようだ。  事故以降、日本の原子力研究者は批判に晒されてきた。やむなきことだが、その間も研究は続けられている。二〇一一年三月十一日以前とは異なり、研究の中心となっているのは「廃炉」に関するものだ。メルトダウンした福島第一原発だけでなく、全国に点在する原発もいずれは廃炉となる。いかに批判されようとも、原発研究者はそれに向き合わねばならない。  福島第一原発の廃炉作業はいまもって手探りだ。地下水を遮断する凍土壁ひとつとっても、いまだに完成していないことをみても明らかだ。したがって、この廃炉作業は、その手段や機器の研究開発と並行して行われている。その司令塔となっているのが、一三年八月に設立された、国際廃炉研究開発機構(IRID)だ。日本原子力研究開発機構(JAEA)や電力会社、プラントメーカーが集まった「技術研究組合」という法人だ。  IRIDが取り組んでいる研究開発課題は大きく分けて「使用済燃料プール燃料取り出・・・