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経済

《クローズ・アップ 》八郷隆弘(ホンダ次期社長)

技術のホンダ「凋落」の共犯者

2015年4月号

 三月十五日、メルボルンで開催されたフォーミュラ1(F1)オーストラリアGP決勝。マクラーレン・ホンダとして、七年ぶりにF1に復帰したホンダは一台がスタートすら切れず、もう一台は最下位に沈んだ。かつてのF1でのホンダの圧倒的な実力を知る世代にとっては、ホンダの衰退を改めて感じた出来事だった。

 凋落ぶりは目を覆うばかりだ。主力車種「フィット」ハイブリッドのシステムの不具合、タカタ製エアバッグ搭載車の大量リコールに加え、販売不振で日本の自動車業界唯一の減益決算見通し。その責任を取って伊東孝紳社長(六十一歳)が辞任するのは当然のこととして、後継の八郷隆弘次期社長(五十五歳)がホンダ立て直しの力を持っているのか、社内外では期待よりも不安が強い。

 最大の理由は伊東社長の〝子飼い〟として、二〇一〇年以降、購買二部長、鈴鹿製作所長、欧州子会社副社長、中国法人の生産統括責任者を務めてきたことだ。人によってはこれを帝王学と呼ぶかもしれないが、むしろ伊東体制の失敗の現場責任者、すなわち失敗の共同責任を負うべき人物とみるべきだからだ。伊東社長は形のうえでは引責・・・