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連載

西風 407

観光客が増加する京都のジレンマ

2015年4月号

 観光立国を目指す日本を代表する土地、京都。市内中心部、二条城と堀川通を挟んだ土地を巡り、市と企業の駆け引きが続いている。  二月、京都市の門川大作市長は、阪急不動産と持ち株会社である阪急阪神ホールディングス(HD)に対し申し入れを行った。二条城前にある「京都国際ホテル」跡地について、引き続きホテルを建設するよう文書で要望したのだ。首長が私企業の不動産利用についてあれこれ指図することは極めて異例。  藤田観光が営業してきた京都国際ホテルは一九六一年に「京都初の本格的シティホテル」としてオープンしてから五十年以上が経過し建物が老朽化していた。昨年十二月に営業を終えて、跡地を阪急不動産が取得した。敷地面積は七千五百平方メートルと京都市内では貴重なまとまった広さがある。今後はマンションが建てられるというのが衆目の一致するところだ。  しかし、二条城の目の前という絶好の立地にマンションでは「もったいない」というのが京都市関係者や多くの市民の声であることも事実である。そのため、異例の申し入れとなった。  実は、ホテル建設を希望するのには切実な理由がある。京都市が発表した資・・・