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「アサド政権」ようやく崩壊の兆し

近づく「中東再分割」の号砲

2015年6月号

 シリア・アサド政権の不敗神話に赤信号が灯っている。政治的にはロシア、イランに後押しされ、戦場ではシーア派戦闘集団「ヒズボラ」の戦闘員やイラン革命防衛隊の指揮官が共に戦ってくれるという強力な支援があったため、アサド政権のシリア支配は盤石であるとされてきた。だから、大した戦果もなしに「アサド抜き」の和平プロセスを求めるシリア国民連合(反体制諸勢力連合)の主張は、寝言以外の何ものでもないと、取り合ってもらえなかった、というのがこれまでの経緯だった。またもうひとつの背景として、米国が意図的に介入を忌避し続けたため、二十一世紀最大の惨事にもなぞらえられる五年がかりのシリア内戦は、固定化が懸念されていた。それなのに、である。  四月下旬から五月にかけて、北部のイドリブやジスル・アッシュグールなどの戦略的要地が相次いで反政府勢力側の手に落ち、政府軍側は致命的な撤退を余儀なくされた。それだけではない。今や政府軍の劣勢は全国的で、アラウィー派(アサド家)お膝元の海岸部ラタキア郊外や、南部のダラアなどでも政府軍は窮地に立たされている。そして五月二十日には「イスラム国」(IS)が中部のパルミラを占拠・・・