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WORLD

欧州観光業「絶望」の夏

「旅行=感染拡大」の辛い連鎖

2020年8月号

 恐れていたことがついに起きた。
 スペインのリゾート地マヨルカ島を訪れていたドイツ人家族の中に、七月後半、新型コロナウイルス感染者が出たのだ。悪評プンプンだったスペインの観光キャンペーンにとっては、さらなる打撃。欧州連合(EU)は経済の一〇%を観光に依存するだけに、数年にわたって回復の重しになるとの見通しが強まっている。
 ドイツ政府は、このニュースに迅速に動いた。七月二十四日、EU域内でも「高リスク」と見なされる地域からの帰国者については、ほぼ全員にウイルス検査実施を決めた。英政府もスペインからの帰国者を隔離した。
 この時外国にいたドイツ人、スペインにいた英国人は大半が、「スペイン(またはイタリア)に行こう」というキャンペーンに乗せられて渡航した人ばかり。安心して出発したら、いきなり帰国で高いハードルが設けられたようなものだ。
 マヨルカ島のドイツ人観光客については、夜の大乱痴気ぶりの映像がSNSで拡散し、国際的な注目を浴びた。だが、在ベルリンのドイツ紙社会部記者は、「あの程度は例年なら見慣れた光景だ。スペインに来て、お金を落として、ホテル・・・