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社会・文化

ヤクザと国税庁「馴れ合い」の関係

山口組の脱税が「不問」の理由

2015年7月号

「今回は警察に尻を叩かれて協力したようだが、今後も続けられるスキームではないし、国税にその気はない」  ある国税OBの税理士は、工藤会トップの再逮捕劇についてこう断言した。「上納金摘発」という手法は暴力団撲滅に向けた新たな切り札にはならないという。その原因は、国税庁という組織の骨の髄まで染みついた体質にある。  六月十六日、福岡県警は所得税法違反の疑いで、北九州市に本拠を置く特定危険指定暴力団の工藤会トップ、野村悟容疑者ら幹部四人を逮捕した。二〇一〇年から一三年の四年間に、工藤会が運営費名目で集めた上納金のうち二億二千七百万円を野村容疑者の個人所得とみなし、約八千八百万円の所得税を脱税したという容疑だ。今回、福岡県警は、国税と協力して逮捕にこぎつけたが、報道では「史上初のケース」という部分がクローズアップされた。 ヤクザと宗教団体は避ける  どの暴力団でも徴収している傘下組織や組員からの上納金は、市民感覚では当然所得だ。これまで捜査のメスが入っていなかったことは盲点だろう。今回摘発された工藤会トップは、捜査当局が把握しているだけでも二十二億円の資金・・・