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社会・文化

ありがたがるな「世界遺産」

寺脇 研(元文部科学省大臣官房広報調整官)

2015年6月号

 ―新たに世界遺産に登録される、軍艦島などについてどうお考えですか。

 寺脇 なぜあれが世界的に守っていくべき人類の遺産なのかわからない。今回の選定は、明らかに安倍晋三首相の地元である山口県を含めようという意思をもった政治が主導したもの。敗れた長崎県の教会群の価値はともかく、政治色の強い選定になってしまった。そんな経緯で選ばれた遺産についてメディアや国民が一喜一憂しているのは滑稽でさえある。


 ―世界遺産に指定されることに意味はありませんか。

 寺脇 一九九三年に初めて屋久島や白神山地が自然遺産に登録されたことには一定の意味があった。国内ではそれまであまり注目されず、放置していれば、開発の手が入る可能性があったがそれを防ぐことができた。しかし、同年に文化遺産として登録された姫路城や法隆寺については、どの程度の意味があったか。私は文部科学省から広島県に教育長として出向している時・・・