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社会・文化

日本の農家は保護され過ぎ

本間正義(東京大学大学院教授)

2013年2月号

 ―先の総選挙で一部争点化されたように、来る日米首脳会談ではTPPが再び議論の俎上に載りそうです。
 本間
 農業に対する国際化の黒船はすでに二十年前から来ている。この間、市場価格を国際水準にまで引き下げる改革を行ったEUに対し、日本は農産物、特にコメに対する保護水準を引き下げてこなかった。主食であるコメに七七八%、小麦に二五二%もの関税をかけて保護している。七五%を超えると高関税とされる国際水準からみて、まさに天文学的な数字だ。その結果、消費者は一俵一万五千円という高いコメを買わされている。

 ―過保護な農業政策のツケがそのまま価格に反映されているわけですね。
 本間
 値札に書かれている価格だけがすべてではない。土木事業に消えた六兆円を超えるウルグアイラウンド対策費が代表だが、農業保護を名目に膨大な国費が投入されている。土地改良の場合、十アールあたり工事費が百二十~百五十万円かかる。そのうち八分の七が補助金、つまり国民の負担だ。膨大な国費で土地改良をやって、何が起こったかと言えば、期待された大規模化と生産性向上による・・・