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社会・文化

データ科学人材「大増員」を急げ

宮野 悟 (東京医科歯科大学特任教授)

2023年8月号

 ―医療分野でのデータ活用の重要性が増しています。
 宮野
 医療を情報工学が牽引する時代が既に到来している。実際、米英では医学部トップは情報科学系の人材へと次々に置き換わっている。医師や歯科医は本質的には技術職で、仕事の大部分はいずれAI(人工知能)やロボットに置き換わるだろう。データ科学は医学分野だけでなく重要性が増しており、世界的に人材獲得競争が起きている。ライバルはグーグルやマイクロソフトなど「ビッグ・テック」だ。私は東京医科歯科大学のM&Dデータ科学センター長を務めており、人材確保に取り組んでいる。この間、海外の女性研究者四人に招聘を打診したが、年俸一千五百万円では「ワーキングプア」だとけんもほろろに断られた。最近の円安はかなりの痛手だ。
 ―日本の医療データ活用の課題はなんでしょう。
 宮野
 残念ながら今の病院はどこも「データのゴミ屋敷」で、貴重なデータを未整理のまま溜め込んでいる。その整理にかかる莫大なコストを、医療費がカバーしていないことも問題だ。また、日本の医学部や病院は今・・・

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