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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》予備自衛官

人手不足「国防衰退」の恐るべき現実

2017年4月号

 東日本大震災から今年三月で六年が過ぎ、四月には熊本地震から一年を迎える。未曽有の自然災害で、あまたの自衛官が昼夜を問わず人命救助や復旧作業に従事していた姿は今も私たちの脳裏に鮮明に焼き付く。
 だが、この一群の中で「予備自衛官」と呼ばれる人々が奮闘していた事実はあまり意識されていない。大規模な災害や有事で臨時に招集されるのだが、その充足率は定員の七割にも満たず、稼働率も極めて低い二重苦に陥っている。自衛隊を辞めても予備自衛官に志願しないばかりか、登録しても、勤務する会社への遠慮から、名ばかり予備自衛官にならざるを得ないからだ。「人は城、人は石垣」。人材の大切さを説いた戦国武将、武田信玄の名言は古今東西、変わらない。自衛官の人手不足に加え、予備自衛官の空洞化が加速すれば、日本の国防が衰退する重大な危機は避けられない。
 まず、予備自衛官制度を概観してみよう。その歴史は、自衛隊が産声を上げた一九五四年にさかのぼる。常備自衛官の人数を抑え、必要な時だけ増員する人材の効率化が狙いで、第一線の自衛官OBが対象だ。有事の際、後方地域の警備や任務に就く。自衛官のマンパワー不足か・・・