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ウクライナ「西部戦線」異状あり

増幅するプーチンの「領土的野心」

2015年8月号

 東部で深刻な武力衝突が続くウクライナで、新たな紛争が勃発した。今回の現場は、ウクライナ系が優勢なはずの西部の国境地帯。ポロシェンコ大統領は紛争地域の知事や治安担当者を入れ替えるなど、緊急対応に追われている。東部が停戦にほど遠い中で、「第二の戦線が開かれた」と懸念する声があがっている。  問題の地域は、ウクライナで「ザカルパッチャ(トランスカルパチア)州」と呼ばれる、カルパチア山脈西部地帯。歴史的には「カルパチア・ルテニア」と呼ばれ、「オーストリア=ハンガリー帝国」の領土だった。帝国崩壊後は統治者がめまぐるしく変わり、第二次世界大戦後に、チェコスロバキアからソ連に割譲された。  同州は住民の八割がウクライナ語を母語とする。ハンガリー系(一二%)、ルーマニア系(三%)の少数民族もいるが、ロシア系は三%以下で、東部で起きているような民族紛争はなかった。  ところが、七月十一日、同州のムカチェボという市(人口八万五千人)のスポーツクラブで突如、銃撃戦が発生した。撃ち合ったのは、極右民族主義組織「右派セクター」所属の武装民兵と、州の地元警察。右派セクターの十数人は市外に逃れ、・・・