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社会・文化

C型肝炎「超高額」新薬に異議あり

一兆円超の「国民負担」は公平なのか

2015年10月号

 命をとるかカネをとるか―。日本は今、百五十万人以上が感染しているC型肝炎について、密かにこの問題に直面している。「患者」という弱者の前に思考停止した厚生労働省など当事者の不作為により、社会負担は途方もない額に膨れ上がろうとしている。 欧米は使用に「制限」  今年五月二十八日、厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、新たに七つの新薬について承認を答申した。この中に、米国の製薬企業「ギリアド・サイエンシズ」の製造するC型肝炎治療薬「ハーボニー」が含まれていた。その後七月に入り正式に承認が下り、八月二十六日には薬価が決定、保険適用が正式に認められ早くも同三十一日から発売されている。  問題は薬価だ。ハーボニー一錠は八万百七十一円もすることになった。C型肝炎患者は、この薬を一日一錠、十二週間にわたって飲み続ける必要がある。薬代は合計で約六百七十三万円。高額医療費の払い戻し前であれば、患者は窓口で二百万円余りを負担しなくてはならない。しかし、診療報酬などを事実上決定する厚労大臣の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は、「患者の負担を減らすため」として・・・