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連載

西風 415

「民泊」に揺れる大阪・京都

2015年12月号

 二〇二〇年の東京五輪開催に向け、国内の宿泊施設不足解消の切り札として注目される「民泊」。一般住宅を宿泊用に利用する制度だが、バラ色の未来ばかりが待っているわけではない。

「深夜に外国人が突然家の中に入ってきたり、大声を出されたり、本当に迷惑」

 こう嘆くのは大阪・ミナミの繁華街にほど近い場所で、ワンルームマンションやコインランドリーなどを経営する西尾元伸氏だ。西尾氏はシェアハウスの「日本橋ゲストハウス」も経営している。

 最近、他の業者がワンルームマンションを「民泊用」にした物件を近所にオープンさせた。名前は「ゲストハウス縁日本橋」。なんとも紛らわしい名前だが、この結果、西尾さんのシェアハウスに間違えてやって来る外国人観光客が急増したのだ。中には間違いと分かっても「案内しろ」と強要する外国人もいるという。おかげで入居者から西尾さんへの苦情が絶えない。

 民泊は、本来住宅である場所をホテル代わりにする。外国人観光客が泊まれば「異文化交流が広まる」という触れ込みは間違っていないが、一方でトラブルも起き・・・