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連載

日本の科学アラカルト65

画期的成果が期待される二酸化炭素の回収・利用研究

2016年1月号

 十一月に大規模テロが発生し、厳戒態勢が敷かれるパリで国連気候変動枠組み条約第二十一回締約国会議(COP21)が行われた。十二月十二日には、二週間にわたる会議の成果として「パリ協定」が採択され、今後の二酸化炭素(CO2)削減の国際的な枠組みが決まった。今世紀後半から二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出と吸収の均衡を図るというもので、同協定には加盟国に対して法的拘束力を持つ。  CO2を温暖化の主犯と捉えるかどうかは議論が分かれる。太陽活動による温暖化を唱える研究者も多いが、日本は国際社会の中で生きている以上、協定を守る必要がある。CO2の排出量を削減するためには、化石燃料を燃やさないことが最大の解決策だ。日本は世界有数の省エネ国であり、米中と比較してエネルギー消費を抑える選択肢があまり残されていない。そのため、一度排出したCO2を回収する技術が極めて有効になる。  京都大学の物質―細胞統合システム拠点のイーサン・シルバニア准教授らの研究グループは二〇一四年九月、極めて安価なCO2回収技術を開発したと発表した。  火力発電所や工場などから出る排ガスからCO2を分離す・・・