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脱北者をもてあそぶ韓国

政治利用後に「使い捨て」する冷酷

2016年6月号

 ソウル市から車で一時間余り、南西に位置する京畿道始興市。幹線道路から少し奥に入った場所に、緑に覆われた建物が人目を避けるように存在する。韓国の情報組織、国家情報院(国情院)が管理する「北朝鮮離脱住民(脱北者)保護センター」だ。
 五月十六日午後、この秘密めいた建物の前で十人ほどの韓国弁護士らが即席の記者会見を開いた。中国浙江省寧波から四月初めに脱北した北朝鮮レストラン従業員十二人との面会を要求する会見だった。同センターには従業員十二人と支配人一人の計十三人が四月七日から滞在しているとされる。
 弁護士たちによれば、この日午前、国情院長から「面会不許可」のファクスを受け取ったという。「拘禁施設ではないといいながら、なぜ面会を認めないのか」「脱北者の表現の自由を奪うのか」と口々に国情院を批判した。
 面会を要求した対象者のなかに支配人を入れなかったのは、「確かな筋から、国情院と支配人が共謀して、脱北を誘導したという情報を得たからだ」と主張した。弁護士たちは最後に、十二人が北朝鮮にいる家族に宛てて連絡を取れるように手紙セットを差し入れして引き揚げた。
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