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経済

もう要らない「電気事業連合会」

中部電力が会長で「空中分解」へ

2016年5月号

 「関西電力は高浜発電所三号機及び同四号機を運転してはならない」。東日本大震災から丸五年に向けて時計の針が進みつつあった三月九日、滋賀県大津市から届いた一報は、震災の過ちを忘れかけていた電力関係者の目を覚ますには十分すぎるほどのインパクトを与えた。大津地裁の判決は、動いている原子力発電所であっても止められることを証明したという点で極めて革命的だった。利益率の高い原発は電力会社の経営に欠くことのできない存在だが、その生殺与奪の権は事業者でも国でもなく、民意が握ったことを意味するからだ。
 電力各社が原発運営にもたらす影響を深刻に受け止め、戦々恐々とする中、唯一、別の事柄へ関心を向けていた会社がある。電力業界「三男坊」の中部電力だ。中電幹部は判決を聞き、周囲にこう漏らしたという。「電気事業連合会会長はどうなるんだ」。
 大津判決以降「原発再稼働という花道が消えた」(関電関係者)関電の八木誠社長の去就をめぐっては、「(いま辞めると)引責辞任にも等しく、辞められない。続投するのではないか」(他電力関係者)との見方が絶えなかった。関電社長が続投となれば、八木が兼職す・・・