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オバマ「アジア歴訪」の二枚舌

同盟と米中「新型大国関係」は両立しない

2014年5月号特別リポート

 オバマ大統領によるアジア歴訪の最大の狙いが、おろそかにしてきた「リバランス(再均衡)政策」あるいは「ピボット(軸足)政策」の再確認であったことは間違いない。大統領自身が四月二十四日の安倍晋三首相との共同記者会見で、「尖閣諸島は日米安全保障条約第五条の適用対象となる」と言明したことは、日本にとっての大きな得点だろう。フィリピンその他領土、領海問題を中国との間に抱えているアジア諸国にとっても朗報になったのは確かだ。が、こと中国に関するかぎり、ウクライナ問題との絡みで「国際的な秩序と法を守る責任がある」などと直接国名を挙げるのを避けたほか、「中国は世界にとって重要な国だ」とむしろ持ち上げるような表現が目立った。

 実は、米中間に多面的な新しい関係を構築する動きは進行しており、オバマ政権は同盟国関係を強化するリバランス政策と同時並行的に「新型大国関係」の話し合いも進めている。ヘーゲル米国防長官は四月初めにハワイで東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と国防相会議を開いた。リバランス政策の一環だが、そのあと日、中、モンゴルの三カ国を訪問した。中国では尖閣問題で激しいやり取り・・・