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経済

トヨタに「復讐する」テスラ

北米で電気自動車の「猛攻」始まる

2016年5月号

 電気自動車(EV)ベンチャーの米テスラモーターズが「復讐」の火蓋を切った。ターゲットはハイブリッド車(HV)帝国を築くトヨタ自動車だ。一度はEV開発で提携した両社だが、いまやトヨタは燃料電池自動車(FCV)を発売し、テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)はフューエル・セル(燃料電池)をもじって「フール(愚かな)・セルだ」と広言してはばからない。そして二〇一六年四月にはテスラが低価格の五人乗りEVセダン「モデル3」を発表。この新型EVがトヨタを震え上がらせているという。
「FCVは極めて愚かな方法でエネルギーを蓄えている。最高の燃料電池ですら現行のバッテリーにかなわない」―マスクCEOは一五年一月の北米国際自動車ショーで、こう挑発した。トヨタのボブ・カーター上級副社長は「二〇二〇年代にはFCVの必要性が見えてくる」と反論するのがやっと。世界初の市販FCV「ミライ」を開発した田中義和トヨタ製品企画本部チーフエンジニアも「他社の技術を批判して対立をあおる必要があるのか」と不満を口にする。
低価格EV投入で全面戦争に
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