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WORLD

「英国発」欧州瓦解のシナリオ

難民・紛争・金融危機の「憂鬱な大陸」

2016年7月号

 英国が欧州崩壊への引き金を引いた。BREXITで始まるのは、百万人を超える難民危機の爆発、経済危機のさらなる深化、そして近隣諸国の紛争激化のプロセスである。
 激震で弱まった欧州連合(EU)には、団結して取り組む力はなく、盟主のドイツも苦手の安全保障ではすっかり及び腰だ。多重危機進行の中で、西欧の安定の礎石だった中道政党が崩壊、EUが約束した「自由で、民主的、繁栄した経済」の理念は、各国で急速に退潮している。その相貌は二十一世紀版の「暗黒の大陸」に近づいている。
最大の敗者はメルケルのドイツ
 英国で国民投票が行われた六月二十三日。
 ロンドンから二千キロ離れた地中海洋上は、全く別の歴史的な日になった。この日だけで、約四十隻の難民船が、イタリア当局やEUが派遣した海難救助隊に救出された。難民数は一日だけで約五千人。翌日には、さらに二千人以上。二日で七千人は今年の最多記録だ。
「難民は欧州事情に敏感で、BREXITが新たな入国規制につながると恐れて、いっせいに押し寄せているようです。最近は、欧州の監視船・・・