三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

トランプに「大逆転」はあるか

「白人至上主義」で危険な大勝負へ

2016年8月号

 米大統領選のドナルド・トランプ共和党候補が、ホワイトハウス奪還のため危険な賭けに出た。民主党地盤の東部・中西部で、「人種カード」を使って白人票を掘り起こそうという戦術だ。黒人による警察官殺害事件が相次ぐ中で、白人層の不安を煽るキャンペーンには、米国社会の亀裂をさらに深める懸念がつきまとう。
 トランプは指名獲得後の最初の遊説先にペンシルベニア州を選んだ。民主党全国大会がフィラデルフィアで開かれているさなかに、同じ州内にある小都市スクラントンに乗り込んだ。人口七万人あまりのこの街は、ジョー・バイデン副大統領が生まれ、民主党候補のヒラリー・クリントンの父親も生まれ育ったことで知られる。
「巧妙な戦術ですね。スクラントンは白人労働者階級の町で、トランプが一番食い込みたいところ。人口は最盛時から半減して、失業率も高いので、『白人不満層』が住む典型的な地域です」と、在ワシントンの米国人政治記者は言う。
中西部戦略は「人種カード」で
 ペンシルベニア州は人口約一千三百万人(全米六位)の大州で、民主党が六連勝中の同党地盤。た・・・