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連載

西風 424

大阪で「文化拠点計画」再始動

2016年9月号

 中之島をフランス・パリのシテ島のような観光拠点にしたい―。この願いのために大阪市が三十年来抱き続けてきた新美術館建設の構想が、今年度予算に建物の設計費など四千六百万円が盛り込まれ、ようやく実現に向けて動き出した。中之島にはすでに、国立国際美術館や市立東洋陶磁美術館などがあり、そのほかフェスティバルホールなどの施設が多く、文化の集積地としての素地はある。
 ここに新美術館を建設する基本計画が発表されたのは一九八三年。高度経済成長の名残を、たっぷりと残した時代で、市制百周年(八九年)記念事業として企画された。
「大阪にはお笑いと食以外の文化は育たない」といわれ、京都や神戸の文化、芸術的な雰囲気に反発しながらも、コンプレックスを感じてきた大阪市民にとっては、待望久しいプロジェクトだ。
 建設予定地は中之島の大阪大学医学部の跡地一万六千平方メートル。すでに市が国から百六十億円で購入。開館目標は二〇〇四年の計画だった。展示作品には寄贈を受けた実業家の故・山本發次郎氏の「佐伯祐三コレクション」がある。代表作の「郵便配達夫」など、近年とみに人気の高まる画家だ。
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