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経済

「泉田自滅」で東京電力の高笑い

柏崎原発「来年再稼働」を巡る妄動

2016年10月号

 八月二十九日は、東京電力にとって特別な日だ。十四年前のこの日、東電が保有する三つの原子力発電所で、原子炉にあるシュラウドのひび割れを隠蔽していたことが発覚。現職の会長と社長が辞任に追い込まれただけでなく、翌年には全原発を停止し、経営に深刻なダメージを与えた。東電にとっては東日本大震災と並ぶ災厄であり、この日を「八・二九」と呼んで忌み嫌うのが東電社員の習わしだ。だが、今年はそんな暗い空気を吹き飛ばすニュースが舞い込んだ。「泉田裕彦新潟県知事、今知事選出馬表明を突如撤回」。それは、東日本大震災以降、気息奄々としていた東電に差す一筋の光明であり、東電復活に向けたのろしでもある。
 泉田知事が十月十六日投開票の知事選出馬を撤回したのは、八・二九の翌三十日。理由は多々あるが、表面的には地元紙の報道への不満があったということになっている。泉田知事といえば反原発の権化であり、「名前を言うのも嫌」(東電関係者)というほど東電にとっては天敵だった。新潟県には東電の虎の子、柏崎刈羽原子力発電所がある。だが、「泉田がいるうちは、柏崎は絶望的」というのが電力業界の常識だった。

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