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経済

日生の「三井生命買収」で悪事発覚

禁じ手「株主差別」で儲けた面々

2016年11月号

 二〇一五年十二月、日本生命保険は、三井生命保険の株式公開買い付け(TOB)で三井生命を完全子会社化し、第一生命に脅かされていたトップ生保の座を揺るぎないものにした。生保業界では「劇的な出来事」と衝撃が走った再編だったが、その源になったTOBに重大な疑義が投げかけられている事実は広く知られていない。
 このTOBには身内の企業に有利な悪巧みが水面下に隠れ「不当な株主差別を受けた」として、三井生命の株主だった海外の機関投資家が孤独な闘いを続けているのだ。裁判に持ち込まれたこの案件の成り行き次第では、閉鎖的で狡猾とも言える手法に国際的な批判が集中して、日本の資本市場のあり方がいよいよ問われかねない。
 問題提起しているのはシンガポールの投資会社「TIHTインベストメント」。一般には知名度は高くないが、投資の専門家でその名を知らぬ者はいない。アーガイル・ストリート・マネジメントの傘下で、かつ、世界的に有名なシンガポールの国営ファンド、テマセクが四五%出資している投資会社だからだ。TIHTはTOBの直前まで三井生命の普通株式を二千百二十七万六千五百株(保有比率七・六四%)保・・・