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連載

日本の科学アラカルト75

「役に立つ」ことを目指す 材料工学研究の現場

2016年11月号


「役に立つかどうか、という観点でばかり科学をとらえると社会をダメにする」
 今年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典・東京工業大学栄誉教授は会見でこう語った。生理学・医学賞の栄誉に単独で輝いたのは、約三十年前の利根川進氏以来の快挙。この研究者の言葉を日本人は重く受け止めなくてはならないだろう。研究費の削減とともに、「目先の成果」を追い求める最近の若い研究者を危惧する声は根強くある。
 一方で、「役に立つ」という点を追い求めることも科学の重要な役割だ。二〇一二年に同じ生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所教授の生み出した成果は、多くの病気を克服する可能性を持つ。大隅氏は「役に立つかどうか『ばかりでは』ダメ」と発言し、基礎研究の重要性を説いたのである。
「工学」という分野は、科学と我々の生活を橋渡しする役割を担う。この分野にも多くのノーベル賞級日本人研究者はいる。一三年、今回受賞した大隅氏と同時にトムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞したのが、同じ東工大フロンティア材料研究所の細野秀雄教授だ。同賞は論文の被引用件数を元に選ばれ・・・