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連載

日本の科学アラカルト77

省エネ社会を実現する 「熱電変換技術」の研究

2017年1月号

 熱電変換—。読んで字のごとく、熱から電気を、電気から熱を取り出す技術だ。初歩的には、二種類の異なる金属の両端を接続して、その二カ所の接続部分に温度差があると電圧が生じ、電球を灯すことなどが可能になる。この「ゼーベック効果」を使うと、火力や原子力、風力など通常の発電方式では不可欠な、タービンや風車の回転するエネルギーを電気エネルギーに変換するというプロセスが不要となる。温度差があれば発電できるため、廃熱などで捨てられていたエネルギーの有効活用が期待できるのだ。
 一方、電気から熱を取り出せる現象のことを「ペルチェ効果」と呼ぶ。ゼーベックの逆効果であり、二種の金属を接続してその両接続部分に電圧をかけることで温度差が生じる。半導体を用い、このペルチェ効果を使った冷却機器はすでにワインクーラーなどで実用化されている。
 二〇一六年九月、東京大学大学院工学系研究科の高橋英史助教と、東京理科大学理工学部物理学科の岡崎竜二講師らの研究チームは、画期的な熱電変換素子を設計するための原理を解明したと発表した。高橋、岡崎両氏は、研究開始時にはともに名古屋大学大学院理学研究・・・