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経済

トランプに震え上がるトヨタ

日本自動車業界の「沈降」が始まる

2017年2月号

 北米自動車市場の大転換が始まろうとしている。ドナルド・トランプ米新大統領は当選直後からツイッターによる「恫喝」で世界の自動車メーカーを右往左往させてきた。日本企業でもトヨタ自動車が二〇一七年一月五日に「トヨタは米国向けのカローラを生産するため、メキシコのバハに新しい工場を造るという。ありえない! 米国内に工場を造らないのなら、高い税金を払え」と警告された。
「トヨタが新工場を建設するのはバハではなく、グアナファト。しかも生産を移管するのはカナダからであり米国は関係ない。事実誤認ばかりの完全な言いがかりで真面目に取り合うような内容ではなかった」と、自動車業界担当の全国紙記者は振り返る。だが、トヨタは震え上がった。デトロイトで開催された北米国際自動車ショーで豊田章男社長が「今後五年間で米国に百億ドル(約一兆一千六百億円)を投資する」と発表し、トランプ政権にすぐさますり寄った。
 この対応が波紋を呼んでいる。前出全国紙記者は「本当に余計なことをした。トヨタの米国販売に占めるメキシコ生産の割合は五%未満。仮に高い税金をかけられたとしても影響は小さい。しかし、メキシコ生産の・・・