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経済

《企業研究》キヤノン

主力事業「総崩れ」に無策の経営

2017年2月号

「3、2、1……」
 快晴に恵まれた鹿児島県肝付町。二〇一七年一月十五日午前八時三十三分、カウントダウンのアナウンスが「ゼロ」を告げるのとほぼ同時に、ロケットは内之浦宇宙空間観測所から勢いよく真っすぐに飛び立っていった。打ち上げは無事成功したかにみえた。
 だが—それはわずか二十秒後、たちまちにして暗転する。ロケットの状態に関するデータを地上に送るテレメトリーの電波が途絶してしまったのだ。三段式のこのロケットは第一段エンジンを分離した後に機体の姿勢制御を実行する。そしてそれが完了した時点で高度、速度などが事前に設定した条件の範囲内に入っていることを確認したうえ、地上からの電波で第二段エンジンへの点火を指示する設計になっていた。テレメトリーの電波が途絶えてしまってはロケットの状態が確認できず、敢えて点火を強行すれば思わぬ方向に飛んで行ってしまう危険性が捨て切れない。結局、点火は見送られ、機体はそのまま第一段落下予定海域へと着水、海底へと消えた。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が目指していた超小型人工衛星を載せたミニ・・・