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社会・文化

生死を分ける「介護とリハビリ」

カネで「寝たきり」を回避する時代

2017年4月号

 リハビリテーションを略したリハビリの語源はラテン語のリハビリターレに由来し、再び(re)人間らしい生活(habilitare)に戻すことを意味する。いにしえの言葉は、急速に高齢化が進む現代の日本でも完全に定着した。ところが、その浸透とは裏腹に、日本のリハビリ制度は社会保障費の抑制から改悪への道をたどり、人間らしい生活どころか、寝たきり高齢者らを量産して死を待つ名ばかりリハビリが横行する。その不備を補うべく、患者自己負担ながら効果の高いリハビリを提供する業者が台頭してきた。社会復帰を目指す、ゆとりのある現役世代が主な利用者だ。この世の沙汰もカネしだい。貧富の広がりの陰で、リハビリの分野でも格差の拡大が静かに進行しているのだ。
 リハビリが必須となる代表的な病が脳卒中である。厚生労働省は二〇〇六年四月、脳卒中などの患者に対するリハビリの最長期間をそれまでの無制限から百八十日に制限した。当時、免疫学者の多田富雄・東京大学名誉教授が主導した反対署名は全国で四十八万人に達したが、無力のまま終わった。社会保障費の抑制という国家の財政事情には抗えなかったのだ。〇八年十月からは、入院後百八・・・