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連載

《世界のキーパーソン》 エブラヒム・ライシ(イラン大統領選候補)

闇深き「反米」保守強硬派の本命

2017年5月号

「国営メディアの選挙報道があまりにも偏っている」。こんな不平が、野党側からではなく、現職の大統領側からあがるとすると、その国はどうなっているのだろうか。
 イランのロウハニ大統領は、最高指導者であるハメネイ師の権威に遠く及ばない。大統領を二期務めたアフマディネジャドも、「あの男は国を分裂させる」というハメネイ師の一言で、護憲評議会から「大統領選出馬の資格なし」と判定された。ロウハニ陣営が圧倒されるほど、最高指導者の寵愛を受け、メディアに紹介されるのが、ライシである。五月十九日投開票の大統領選で、ロウハニ再選に立ちはだかるのがこの強硬保守派だ。
 一九六〇年十二月生まれ。五歳の時に父が死亡し、十五歳で聖地コムの神学校に入学した。イラン革命前夜の騒然たる時期に、革命の牽引車となった宗教団体で思春期を送った。神学校で抜群の成績を修め、イスラム法の博士号をとったことで、俊才の人生の方向が定まった。新生のイスラム共和国の検事として、革命の敵を摘発することだ。裏方としての仕事は、深いベールに覆われていた。
 ところが昨年八月、ライシの闇の一端が世界に知れ渡った。{br・・・

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