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WORLD

中国を悩ます「余剰穀物」の膨張

在庫放出なら世界市場「大荒れ」必至

2017年5月号

 史上空前の規模に膨れあがった中国の余剰農産物が世界の食糧市場に深刻な脅威を与えている。トウモロコシで世界の年間貿易量の二倍にあたる約二億五千万トン、コメもほぼ同水準の約六千八百万トンに達している。中国政府が農家保護のため農産物を高値で買い入れる一方、農業自由化で穀物輸入が急増した結果だ。中国国内の貯蔵能力は限界を超え、政府が安値で在庫処分に打って出るか、アフリカ、中東諸国向けの無償食糧援助に振り向ける可能性が高まっている。現実化すれば世界の穀物市場の暴落は不可避だ。
 中国最北の黒竜江省の中央部に広がる三江平原。黒竜江、松花江、ウスリー江の三大河がつくる肥沃な黒土の平原で、中国最大の穀倉地帯となっている。その中核都市で農作物の集荷拠点である佳木斯(ジャムス)市の郊外では、春を迎えて、異常な光景が市民の目にもあらわになり始めた。
 穀物保管用の巨大サイロの周辺に青いビニールシートに覆われた高さ数メートルの山が広がっているからだ。その周りを肥大化した野ねずみが走り回っている。サイロに収容できなくなったトウモロコシを屋外で保管せざるを得なくなったのだ。厳重に袋詰めされて・・・