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WORLD

ロシアの北極圏「軍拡」が加速

「安保・環境」で世界の新たな難題に

2017年6月号

 北極海の氷が急ピッチで溶けている。北極圏八カ国で作る「北極評議会」の最新報告では夏季の北極海から氷がなくなるのは、当初の予想より三十年も早い二〇四〇年になるという。
 国土の五分の一が北極圏というロシアは、こんな異変に大喜びである。プーチン政権はロシアの北極海沿岸を通る「北東航路」を世界に売り出す一方で、北極圏に相次いで軍事基地建設や軍設備の近代化を進めている。他国に先駆けて北極を要塞化する構想だが、地球温暖化に乗ろうというロシアの思惑は落とし穴だらけである。

主要群島に空軍基地ネットワーク

 今年四月、驚きの写真が世界の報道機関に公開された。
 北極海にあるフランツ・ヨーゼフ諸島の一つ、アレクサンドラ島にロシアが建設した「ナグルスカヤ空軍基地」を写したものだった。最新鋭の同基地は、主要棟が三つ葉の形のモダンなデザイン。周辺にはレーダーと見られる巨大な球形ドームが複数配されている。丸太で組んだサウナ小屋やロシア正教会の教会まで建てられていた。
 北緯八十度にある同基地は二千平方・・・