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連載

皇室の風107

婚約取材の煉獄Ⅰ
岩井克己

2017年7月号


眞子内親王の婚約内定が七月八日にも公式発表される。秋にも発表の予定だったが、報道が先行したため前倒しされるという。
 平成十六年秋、紀宮清子内親王(現・黒田清子)の婚約内定を報じた時の様々な思い出が蘇る。内親王の結婚とはこういうことか、そして皇室はこのように考え行動するのかと、身を以て体験した忘れ難い記憶なのだ。
 秋は皇室と記者たちにとり最も多忙な季節である。園遊会、叙勲・文化勲章親授式、国民体育大会……。とりわけ平成十六年十月、十一月は慌ただしかった。
 十月十八日、長老格の高松宮喜久子妃の手術、同二十日は皇后の古希の誕生日、国体で埼玉県滞在中の同二十三日には新潟県中越地震の発生、十一月六日には天皇、皇后の被災者お見舞いと続き忙殺されていた。
 そんななか、水面下で密かに清子内親王の婚約への動きが始まっていた。昭和三十五年の清宮貴子内親王(現・島津貴子)の結婚関連の記録資料を侍従職が探し始め、察知した一部メディアは色めきたっていた。天皇家と長年親しく欧州で活動している音楽家の男性が御所を訪れたとの情報に・・・