三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

美の艶話19

妻には再三、拒まれたので
齊藤 貴子

2017年7月号

 好きな男のいうことなら、大抵は聞く。
 きっと似合うとプレゼントされれば、全く趣味じゃない服でも、ネットで売り飛ばしたりせずちゃんと着る。して欲しいとリクエストされれば、耳かきも爪切りもするし、ズブの素人だがお背中だってお流しする。禁欲・禁煙なんてできない約束しなくても、タバコの副流煙すらありがたく(いや、さすがにこれは仕方なく)頂戴する有様で、昼も夜も何事につけ、拒むということができなくなる。というより、拒む理由が見当たらなくなる。
 たぶん、それが愛ってものなのだろう。
 ただし、最初に「大抵は」とことわってあるとおり、人間何でもかんでも相手のいうことを聞くわけにはいかない。特に女には、はいそうですか、わかりましたと、簡単に了承するわけにはいかない類の、男からの厄介な頼まれごとに頭を抱える場面がままある。
 その最たるものが写真。もちろん普通のスナップやツーショット写真などではなく、生まれたままの姿を撮らせてくれ、という例のアレ。いわゆるヌードだ。
 ―写真がこの世に登場したのは十九世紀。実用化されたという意味では一八四〇年代のヨ・・・