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連載

新・不養生のすすめ5

「ダイエット」はお止めなさい
大西睦子

2017年8月号

 卵やバターは体に良いとか悪いとか、肉をもっと食べるべきとか控えるべきとか、糖質制限をするべきとかすべきでないとか……。一体何を食べればいいのだろうか。そんな疑問に一石を投じたのが、昨年秋の、カリフォルニア大学サンディエゴ校クリスティン・カーンズ博士らによる「米国医師会雑誌」の報告だ。約六十年前に、米製糖メーカーなどが設立した米砂糖研究財団(現「米砂糖協会」)が、ハーバード大学の研究者らを巻き込んで起こした陰謀事件の真実である。読者の中には、「そんな昔のアメリカの話は、自分の食事とは関係がない」と思う方もいるだろう。「風が吹けば桶屋が儲かる」とはよく言ったものだ。まさにこの事件は海を渡って、今日の日本人の食に対する価値観にも、ありがたくない影響を及ぼしている。
「コレステロールが五日間で正常になる低脂肪ダイエット」「生命を保ち、日々直面する問題の活力となる砂糖」。今日も似たような宣伝をよく目にする。カーンズ博士らによると、このようなスローガンは、一九五四年に、砂糖研究財団の当時の会長ヘンリー・ハンス氏が、米甜菜研究会で砂糖業界の市場拡大のために熱弁・・・