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社会・文化

日本国防の弱点「小笠原領域」

中国海軍「太平洋進出」で狙う海

2017年9月号

 怪力無双の荒法師として名高い弁慶でも攻撃されるとひるんだ死角は「弁慶の泣き所」の故事で今に伝わる。世界最強の軍事力を誇る米国を同盟国とする日本にも、この急所が存在する。それは東京の南南東約一千キロに点在する小笠原諸島を中心に広がる太平洋領域の防衛で、日本を守る防空識別圏(ADIZ)にさえ含まれていない。
 八月二十四日に、中国のH‒6爆撃機六機が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋へ抜けた後、針路を北に変更。沖縄から九州、四国、紀伊半島沖まで初めて飛行した。七月には、中国海軍の情報収集艦一隻が北海道松前町の小島沖で領海に侵入、津軽海峡を通過して太平洋へ出た。昨年末には中国海軍の空母が沖縄本島―宮古島間を通って初めて太平洋へ進出し、その脆弱性への懸念が関係者の間で強まっている。しかるべき防衛力の整備には十年単位を要する。日本がこの空白を埋めていかない限り、そう遠くない将来、日本の表玄関は紅い軍隊の狼藉に侵食されかねない。
 日米軍事筋によれば、前述の津軽海峡を通過した情報収集艦は北上し、米アラスカ沖の公海上を航行。米軍による高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の・・・

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