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連載

《世界のキーパーソン》 蔡奇(中国共産党新政治局員)

習派の中核「世話好き男」の大出世

2017年11月号

 中国共産党の新しい政治局員は二十五人。このうち明らかに習近平派と言えるのが、習氏自身を含めて十三人。習派がかろうじて過半数を制したことになった。その中に習氏と特別な関係にあり、異例の出世を果たした人物がいる。北京市党委書記の蔡奇氏である。
 中国共産党では、中央委員候補、中央委員、政治局員、政治局常務委員と、出世の階段を一歩ずつ進んでいくのが一般的。だが、蔡氏は今回、平党員から直接政治局入りした。党史でも極めて珍しい、スピード出世だった。
 蔡氏をよく知る共産党関係者によると、福建省出身の蔡氏が習氏と出会ったのは一九八五年ごろだという。当時三十二歳の習氏は、河北省正定県の党委書記に就いたが上司との折り合いが悪く、父親のコネで福建省廈門市の副市長に転出したばかり。福建省党委員会の職員だった蔡氏とすぐに意気投合した。
 年齢が近い二人の共通の趣味は囲碁。蔡氏は福建省の言葉や生活習慣を教え、習氏にとって慣れない土地での案内役になった。習氏は福建省で、国民的歌手の彭麗媛と二回目の結婚。その後は、家族ぐるみのつきあいを続けた。
 習夫妻はどちらも多忙で、・・・

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