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連載

Book Reviewing Globe 403

西欧民主主義の内なる脅威

2017年12月号

 今年は、習近平中国国家主席がダボス会議で、「経済グローバル化」の価値を世界に恭しく説くことから幕を開けた。専制体制の国の独裁指導者がリベラル・デモクラシー体制の欧米に向けてともに「進歩」を信じましょうと声をかける。まさに「不思議の国のアリス」の瞬間だった、と著者は言う。
 近代以降、進歩史観を信じてきたのは西欧だった。それに対して、中国やインドは、伝統的に転回史観を抱いてきた。歴史において、精神的なあるいは政治的なフィナーレはない、歴史は、人間の愚行とその矯正の繰り返しに過ぎない、と、彼らは考える。
 西欧の信じてきた「進歩」史観、そしてその政治的表現であるリベラル・デモクラシーがいま、根底から揺さぶられている。わずか数年前、カラー革命に身構えていたのは中国とロシアだった。いま、自国のポピュリスト革命におびえているのは欧米諸国である。
 しかし、欧米の「進歩」理念に対する最大の脅威は、中国やロシアという外からではなく欧米の政治、経済、社会の病理、つまり内から来ている。トランプと欧州における彼の同類が、リベラル・デモクラシーの危機をもたらしたのではない。そ・・・