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連載

美の艶話27

ベッドで紅茶を飲みながら
齊藤 貴子

2018年3月号

 昔、毎朝のようにかけてもらっていた言葉がある。
 Tea or Coffee?
 ホテルのボーイさん風のお伺いはいいけれど、まだ半分夢の中の人間に選択権も決定権もあるはずはなく、コーヒーが飲みたい朝でも、出てくるのは決まって紅茶。それも黒みがかったブラウンに優しい白がトロリと混じった、まったりと濃いミルクティー。
 美味しい紅茶は外ではなく家で飲むもの。もしくは自分で茶葉から淹れるもの―。昭和と呼ばれた時代、ポットにティーバッグを放り込んだだけで千円近くふんだくる店があふれる国で育ったせいか、元々そういう健気な(?)認識は持ち合わせていた。ただ、春の訪れ待ち遠しいロンドンの朝まだき、幼い頃から紅茶を飲みつけてきた彼の淹れるお茶があんまり美味しかったものだから、つい癖になったというか、虜になったというべきか。一緒にいる間に、自分でモーニングティーを淹れることはなくなってしまった。
 後で判明したことだが、そうしていつも淹れてもらっていたミルクティーは何てことはない、タイフーというイギリスでは誰もが知る庶民的な銘柄の格安ティーバッグのお茶で、牛乳も・・・