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ブラジル大統領選でも「極右」が台頭

超過激「熱帯のトランプ」が目下首位

2018年6月号

「危険な大統領候補」
「若者を惹きつける極右」
「熱帯のトランプ 支持率上昇」
 こうした見出しが今、ブラジルの新聞に躍り続けている。長らく左派労働者党(PT)が政権を握ってきたブラジルで、十月の大統領選挙を前に「極右台頭」という異変が起きているのだ。二〇一六年にディルマ・ルセフ大統領弾劾後、ミシェル・テメル暫定政権が発足し、半世紀に一度の大不況から回復の途上にあるが、いまだ一千二百万人以上が失業し、治安は悪化している。
 汚職事件の報も止むことがない。有権者の政治不信は深刻だ。現地の世論調査では「問題は政党ではなく、政治制度である」と回答した有権者は八一%、「政治家は社会を代表していない」との回答は九四%に上る。潜在的候補者に次々汚職が発覚し、目ぼしい候補者がいないという惨状の中、一人の極右候補者に支持が集まっている。

独裁時代を擁護する元軍人

 まず、潜在的候補者の動向を左派から見ていこう。世論調査で三割近く支持を集め、最も人気の高いルーラ・ダ・シルバ元大統領は昨年・・・