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連載

Book Reviewing Globe 409

欧州が中国に対抗する術

2018年6月号

 ここ一、二年で、欧州の中国に対する見方が大きく変化し始めた。中長期的には、中国はロシアをはるかに上回る脅威となりうる。そして、その脅威の性格は、内では「非自由主義的・全体主義的監視国家」、外には「政治・経済開発モデルの普及と輸出」という政治・経済・社会システムの挑戦として現れるであろう。欧州がその脅威を無視した場合、いずれそのつけは欧州に回ってくる。
 中国の脅威は次のような形で表出しつつある。例えば、16+1首脳会議。これは、二〇一二年、ワルシャワで始まった東欧・中欧十一カ国、バルカン五カ国の計十六カ国と中国の首脳の年次会議である。欧州経済危機勃発直後、中国が裏で仕掛け、実現した。中国はこの地域への投資案件を次々と示し、その多くは「一帯一路」(BRI)プロジェクトに織り込まれることになる。その過程で、「自由で一つの欧州」を弱めようとする中国の政治的思惑が透けてきた。
 一六年七月、ハンガリーとギリシャは、南シナ海における中国の領土主張が国際法的に退けられたことに対して、EU首脳会議で言及すべきでないと強く主張した。
 一七年夏、ギリシャは「EUとしての・・・