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連載

美の艶話 第31話

男たちの心の「余白」
齊藤 貴子

2018年7月号

デイヴィッド・ホックニー《絶望して》

やっぱり男には敵わない。
抱きしめる腕の強さとか、組み敷かれた時の体の重さ大きさとか、そんなレベルの話じゃない。筋の通った理屈を蜘蛛の巣みたいに張り巡らせては逃げ道を奪う頭の良さ、肝心なところではぐらかしては気持ちを煽る動物的な勘の良さに、参って負けてもう首ったけという全面降伏の弁でもない。
 女としてまず打ちのめされるもの。それは男という「性」が持つ、ある面での絶対的優位性だ。たとえば同性との恋愛で、本当の意味で肉体的に一つになれるのは、たぶん男性だけ。単なる身体機能の違いといわれればそれまでだけれど、女性同士が物理的に結合し、互いの奥深くまで挿入り込むのは永遠に不可能ときている。この意味で、女性同士の恋愛は男性同士のそれに比べて、どこかしら絶望的で、それでつい男ばかりを愛してしまう。
 しかし、一見優位な男同士の愛とて、決して絶望と無縁なわけではない。プラトンの数々の著作が物語るように、古代ギリシャの昔には女への愛よりはるか格上とされていた男同士の愛の世界にも・・・