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米中「新冷戦」の正体

複雑な「全面対立」は長く続く

2018年11月号


 ロバート・ゼーリック米国務副長官(当時)が二〇〇五年に中国に向けて「ステークホルダー(利害共有国)」になってほしいと呼び掛け、中国はそれに応じるような姿勢を取り繕いながら、「韜光養晦」(才能を隠し、内に力を蓄える)政策をかなぐり捨てた。爪も牙も剥き出しの態度を十三年にわたって続けてきたあげくの果て、いま米国との正面からの対立を招いた。
 ジャーナリスティックには「新冷戦」だが、かつての冷戦と新冷戦は違う。前者は政治、経済、イデオロギーが画然と分かれていたが、後者はいわゆるグローバリゼーションによって経済の相互依存性が分離できないほど強まってしまった。中国は反民主主義ではあっても、「共産主義」のイデオロギーはない。それだけに米中両国間の対立は比類のない、複雑で深刻な摩擦熱を伴い、世界中に伝播し続ける。
 それを承知のうえで、ペンス米副大統領は十月四日にハドソン研究所で講演し、経済、政治、軍事、技術、情報など広範に及ぶ総合的な対中批判を展開した。トランプ大統領個人の言動にひたすら米国内外の報道が集中しがちの雰囲気の中で、米政府、議会、世論がどれだけ厳しい視・・・