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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》 動物愛護団体

犬猫「殺処分」をなくせない真因

2018年12月号

 動物好きに悪人はいない、と言われる。だが、それは事実に反する。ヒトラーは愛犬家だったし、「007」シリーズの悪役ブロフェルドの膝上にはいつも白い猫がいた。もっと凡庸な悪ならば、我が国で「動物愛護」と総称される活動の中にいくらでも見出せる。
 最初に、日本における動物、とりわけペットの犬や猫を取り巻く状況を概観しておこう。
 一般社団法人ペットフード協会の二〇一七年の調査によると、国内で飼われている犬は八百九十二万頭、猫は九百五十三万頭に上る。これは十五歳未満の子ども(今年四月現在一千五百五十三万人)を上回る数字だ。食品、医療、美容などを含めた関連市場は一・五兆円規模と言われる。ペット大国ぶりが窺えよう。
 他方、飼育放棄などで自治体の施設(保健所や動物愛護センター)に引き取られる犬と猫は年間十万頭以上。収容限度を超えた分は、譲渡先がなければ殺処分される。環境省の統計では一七年度で計四万三千頭が命を奪われた。数の多さもさることながら、炭酸ガスによる窒息死という手段の残酷さも国際的非難の的で、「殺処分ゼロ」の早期実現は行政や動物愛護団体の共通目標となっている・・・