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政治

安倍「憲法プチ改正」のお粗末

格好だけの「戦後以来の大改革」

2015年3月号

 国の未来を構想するためではなく、受け入れたくない過去を否定したいだけではないか。  総理大臣在任中に初の憲法改正を目指す安倍晋三が、国会による発議を二〇一六年参議院選挙後に先送りし、環境権や緊急事態条項の新設、私立学校への公金支出を禁じた条項の改正など、反対論が少ないとみられる課題から着手する方針を示したことである。  現行憲法を「連合国が押しつけたもの」として、その価値を積極的に認めず、「戦後、日本人は憲法を作ったことがない」という歴史に終止符を打つためなら、改正の中身は二の次だという姿勢は、一二年の第二次安倍政権発足直後、改正の発議要件を緩和するために九十六条の先行改正を唱えた時にも見られたものだ。これが一五年通常国会の施政方針演説で強調した「戦後以来の大改革」の正体だとすれば、拍子抜けだ。  ハードルの低いものから徐々に難易度を上げる戦略には、一理ある。ただ、国民全体を巻き込んでの大事に臨む以上、優先順位は重要性と緊急性に基づいて判断するのが筋だ。今のままでも不都合がない事項に約八百億円とも言われる国民投票の経費と時間をかけ、辻褄合わせをするだけなら、その効用・・・