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経済

米国は「景気後退」するのか

溢れる悲観論を疑う必要あり

2019年6月号

 ニューヨーク連邦準備銀行が毎月発表する一年後の「景気後退確率」が急上昇している。実に二七・四八九三%。この指標の精度に鑑みれば、二〇二〇年四月末時点の確率が三〇%弱という数字は、警戒に値しよう。他方、今年四月の失業率は三・六%と四十九年ぶりに低水準を更新した。〇九年から続く景気拡大は既に十年を超えるため、景気拡大の余地などないと考えるのも無理はない。「世界経済の低迷」「米中貿易戦争」「株式市場の乱高下」「トランプ減税効果の衰退」「米景気後退迫る」。メディアにネガティブな見出しが躍る今、どう先行きを見通せばいいのか。
 この景気後退確率は、国債のイールドカーブ(長短金利差)分析で算出する。他にも米金融機関が独自の景気後退確率を出しているが、黄信号を発しているのはいずれも「イールドカーブ」と「失業率」に重点を置く。しかし、予測の前提となるこの二つの変数がいずれも信頼性に乏しい。

アテにならない「逆イールド」

「低失業率と低インフレ」は昨年十一月号の本誌で既報の通りだ。労働参加率が低下し、労働市場には隠・・・