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社会・文化

知られざる「人為地震」リスクの拡大

「地下資源開発」が誘発する厄災

2019年9月号

 日本では古来、ナマズが大地震を引き起こすという俗説があった。江戸時代ごろにはすでに世間に浸透していたようで、そこからナマズを観察すれば地震発生時期がわかるのではないかと考える者も出始めた。地震予知のさきがけといえるかもしれない。
 地震の予測はいまだに困難がともなうが、一方で、「何者かの活動が地震を引き起こす」というのは、さほど荒唐無稽な考えではない。地下開発などによる誘発地震についての研究は世界で進んでいる。こうした「人為地震」によるリスクは増加する傾向にあり、今後、経済活動の足かせとなる可能性も指摘されている。

科学的に立証された「定説」

 目下、地下資源開発に起因する地震が国家経済を直撃しそうになっているのがオランダだ。
 北海に面したオランダ北部のフローニンゲン州。風車の並ぶ放牧地に石と赤レンガの家が立ち並ぶ典型的な欧州の田園地帯である。一九五九年に世界最大級の埋蔵天然ガスが地下で発見され、六三年に生産が開始されて以来、同国のエネルギー供給を支えるだけでなく、周辺国へのガス輸出が・・・