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社会・文化

「ジビエ・ブーム」に潜む危うさ

食文化に定着するための「課題」

2020年1月号


 ジビエ―。狩猟によって捕れた野生鳥獣、という意味のフランス語だ。十年ほど前までは、フレンチレストラン業界の関係者か、ちょっとした食通でもなければ使わない言葉だった。それが今や、一般名詞となり空前のジビエ・ブームが来ている。グルメポータルサイトの検索窓にジビエと入力すれば、たちまち五千軒以上のレストランがヒットし、多くの人が美味しいジビエを求めている。
 だがちょっと待ってほしい。そのジビエ肉はどのようなルートを辿って皿に載ったのか。それは今後も安定供給される代物なのか。ブームの裏側ではどのようなことが起きているのかを見てみよう。

ハンターの「良心」に頼れない

 ヒントは「国産ジビエ認証」という制度にある。これは、二〇一八年に農林水産省がスタートさせた「国産ジビエ事業者」に対してお墨付きを与えるもので、国が定めた衛⽣管理や基準を遵守している事業者であることを証明する枠組みだ。その叩き台となったのが一四年に制定された厚生労働省の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」で、その中・・・